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滝を流れ落ちたことのある管理人の妄想と勝手な思いを語るブログ。作品のネタバレ多数あるので注意が必要。3月8日作成
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 最終回でーす。お付き合いいただきありがとうございました。
 冬コミケ受かったら、まとめて推敲して出すつもり。



※※※

 

(まさか、本当にもう一回抱きしめられるなんて)

 泣きじゃくるこのはを抱く幸せを噛みしめている私に向かって話しかけてきたのは、恩人でもある蠅の女王だった。

「さてと…それじゃあ、あたしたちはそろそろ次のゲームを始めてくるわ。それで、あなたはどうするのかしら?魔王の写し身であり、あたしの力で復活した時泉初音さん。勿論私のモノになってくれるのよね?」

 一つ伸びをしたベール=ゼファーが、一転して真面目な表情で私を見つめた。

「なにを…」

 慌てて顔を上げたこのはを私は抱き直す形で止める。

「あら、大魔王であるベール=ゼファー様からのお誘いですか?」

 その提案は彼女の優しさ。

「なっ、違うわよ。別に腐っても魔王であるあんたがウィザード達に見つかったら消されるかもなんて思ってないわよ。ちょっと使えるかもしれないから誘ってるだけよ。」

 どこまでも魔王らしくない台詞を吐く大魔王を他の三人の魔王が生暖かく見つめてる。

 だけどそれは馬鹿にするものじゃない。愛しさからくるものだ。

 たぶん彼女と行動を共にするのも楽しいのだろう。

 でも・・・

「ああ、そういうことですか。心配して頂けるのはありがたいですが、私はこのはちゃんのものですから…このはちゃんがいる世界で、その世界を護るために生きていきます。勿論貴方のゲームも攻略させていただきます。」

 私は静かに、だけどはっきり答える。

 私はこのはちゃんのものだから。16年前に彼女を産んだあの日からそれだけは変わらない。

「そう…じゃあ、これからのゲームは難易度があがりそうね」

 大魔王は少しがっかりしたような顔を浮かべたかと思うと、次の瞬間には不敵な笑みを浮かべた。

「ええ、いきなりレベルが上がりますから覚悟していてください」

 それは決別の言葉。だから私もその言葉に応える。

「それじゃ、もうここには用はないし、アゼル、リオンもう一回風呂に入って帰るわよ。」

「はい、大魔王ベル」

「あ、ベル待って」

「私は無視ですか?」

 旅館に戻っていく魔王達の姿を見送りながら、私はもう一度このはを抱きしめた。

 

※※※


「はわっ、それで魔法は消滅、おまけに魔王の完全討伐とこのはちゃんのお母さんの復活…ってことでいいの?」

 ずいぶんと殺風景になった執務室。その中でパイプ椅子に座り、折り畳み式の机で仕事をするくれは様がうれしそうに言った。

「ええ、とりあえずお母さんは先に家に帰ってもらいましたが。」

「あー、それがいいねぇ…とりあえず手を出せないようにしておくけど…今回みたいなことがまた起きるかもしれないし」 遠い目をしながらくれは様がため息をつく。

 その視線の先には崩壊した執務室があった。

「結局、反乱はどうなったんですか?」

 お茶をすすりながら、ファルツが呟いた。

「あのあと、あなた達を追おうとする人たちを物理的に止めて、あなた達が世界を救うか、救えないかで賭をしたんだよ。」

「それって…賭になってないような…」

 今回の危機は失敗すれば世界は滅びる危機…つまり、失敗した後の話なんてない。

 私たちのあきれるような視線に、いたずらに成功したような小さな笑いを浮かべ、くれは様は湯呑みを傾けた。

「くれは様…アンゼロット様に似てきましたね。」

「はわっ!?それは喜んでいいの?」

 なんだか、微妙な表情を浮かべながら彼女は言った。

 

※※※

 

「それじゃあ、今回の任務お疲れ様でした。詳しい報告書は明日以降でいいから、今日はぐっすり休むこと」

「はい…それでは失礼します」

 二人は立ち上がり、ドアの方へ歩いていく。

 その後ろ姿にあたしはつい声をかけた。

「二人ともありがとう。」

「お礼を言われることをした覚えはないですが?」

「そもそも僕のせいだしね。」

 そう軽く笑いながら挨拶をし出ていく、だけどあたしは本当に感謝していた。自分のやり方を肯定してくれた、そしてそれをやってのけてくれた二人に。

「…本当にありがとう。貴方達のおかげで私はまだまだ頑張れるよ…さーて、お仕事お仕事…今日の判子押しはあと3672枚……はわわわー、特殊部隊グリーンティー、お茶のおかわりお願いー。」

 決意が揺らぐ書類の山、その一番上の書類に向かってあたしは判子を押した。

 

※※※


「…そう、あの魔法はなくなったのね」

 使い魔から受けたその報告にベルの安堵の声が漏れた。

 元凶となる魔王を倒し、このは達が帰って来たとはいえ、魔法がなくなったことが確認できていなからだ。

「ま、まぁ、当たり前よね。あたしが試練までしたんだから。」

「関係ないと思います大魔王ベル。というかどうでもいいです大魔王ベル」

 機嫌よくしゃべるベルの言葉をリオンが遮る。

 毎度のことだが勇気があると思う。

「どうでもいいとはな…に……り、リオン?」

 ベルが振り向くとそこにいたのは目を輝かせたリオンの姿…それは本当にリオンらしくない姿だ。

「あの魔法がなくなったなら、私の本の封印を至急、速やかに、できうる限り早く、無言で解いてください大魔王ベル。」

「わ、わかったわよ」

 声は笑っているけど有無を言わさない迫力にベルが圧されていた。

 

「んー。ルーとの契約の期限もそろそろ終わりね」

 封印の解けた本を高速で読みふけるリオンをおいてわたしとベルはもう一度温泉に入りに来ていた。

「ごめんなさい、ベル…わたしが無理なお願いをしたせいで」

 そう…ベルと一緒に温泉に入れた喜びで忘れそうになっていたけど、わたしを温泉にいれるという無理なお願いのためにベルはしなくてもいい労力と力を使った。

 特にルー=サイファー様に頭を下げるという…彼女にはあり得ない行為までしてくれた。でもベルは…

「大魔王に二言はないのよ。あんたが気にすることなんてこれっぽっちもないわ。それに…」

「それに?」

「あたしだって、あんたと一緒に温泉入りたかったからいいのよ」

 真っ赤になりながらそっぽを向く彼女を見てわたしの目から涙が流れていた。

「な、何で泣くのよ」

 あせるベルになんでもないと笑いかける。

「ベル」

「だからなに・・・よ?」

 わたしはベルに抱きついた。

「な・・な・・な・・・」

「ありがとうベル。大好きだよ。」

 あせるベルにわたしはその一言を告げた。

※※※


今日も私は夢を見る…あの日、私の“世界”が変わったあの日の夢を…だけどその夢はもう悪夢じゃなかった。

 

(…のはちゃん、このはちゃん)

私はまどろみの中でその声を聞く。夢の中で聞いていたあの声。

「ん、ふぁる?」

「おはよう、このはちゃん。起きる時間だよ」その声に私は目を覚ます。

「おはようございまふ…んーと、おはようのキスは?」

寝ぼけたふりをしながら私は言う。素では言えない恥ずかしいことを。

「はいはい、お姫様はわがままだな。」

「むぅ」

そんな風に笑いあいながらファルツと唇を重ねる。

そして…

「あるじ様ー、朝ですよ。今日のご飯は三葉ととき卵のお味噌汁と砂糖たっぷりの甘い卵焼き、それにもやしと卵の…って、ファルツさん!なんであるじ様を起こしてるんですかっ!これで一週間続けてですよ?わたしに喧嘩売ってるんですね!?わかりました買いましょう。言い値で買うから表に出てくださいっ!!

「あらあらあらあら、毎朝お熱いわねぇ。あ、子供は高校卒業してからにしなさい。若いうちに作ると大変だから…主にわたしが…まだわたし孫の世話より遊びに重点を起きたいから」

古鉄とお母さんが乱入するのもいつも通りだった。

そんな光景を見て私はため息をつく。

でも…私は笑みを浮かべていた。

(いつも通りの始まりの朝。だけど毎日違って感じるのは自分の心の持ち方かしら…それに)

「僕も隣にいるしね。」

私の心を読んだようにファルツが言う。

「あなただけじゃないわよ。」

そう言って笑いかけた瞬間、部屋に電話の音が響いた。

「はい、このはですが?」

「あ、このはちゃん?」

「くれは様?」

焦ったようなくれは様の声を聞き、私の表情が変わる。

「またまたまたまた世界の危機なんだよ。ベール=ゼファーがまたなにか計画を立てててね、とりあえずファルツさんと一緒に宮殿に来て、あたしのお願いにはわかはわわで答えてー!」

「わかりました。すぐ向かいます。」

私は電話を切る。

 大事な日常の時間は終わり、今から始まるのは非日常の時。

 

さぁ…


「世界を護りに行きましょうか。」

Fin.

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