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古鉄と別れ、転移した先は温泉街だった……って温泉街?
”ようこそ、神魔温泉界へ☆”
でかでかとそう書かれたアーチを私とファルツは見ていた…なんというかシュールだ。
「ハルカ?どういう事?」私はこの場所の座標を指定したハルカをじと目でにらむ。
「あ…えーと…」なぜか脅える魔王。そんな時偉そうな声が響いた。
「私がここにいるからよ」声が聞こえた方向から、私はとっさに距離をとった。そして見た…そこに佇む浴衣姿の蠅の女王を…大魔王としての威厳の欠片もが感じられない姿だが、そのオーラはいつも現れる写し身などより確実に強かった。
(これが、境界…世界結界がない世界ということ…)そのオーラに私は震える手を必死に抑えた。
「大魔王ベール・ゼファー…浴衣がよくお似合いで」そして私は軽く嫌みを言う…背中に伝う汗に気づかない振りをしながら。
「ふふふ…それは胸がないと言いたいのかしら?まぁいいわ…今回の世界の危機は私も迷惑してるのよ。とりあえず移動しましょうか」そう言って大魔王は歩きだした。
「行こう、このはちゃん。大丈夫、彼女は今回の事件においては…君に近い立場だから」ファルツは彼女の後を付いていく。だから私も歩きだした。
カポーン。バックに鹿おどしが響く、和室に案内される。
そこにいたのは、やはり浴衣を着た荒廃の魔王と秘密公爵だった。だが…その二人の表情は私が見たことがないものだった。
何かから解放されたように安心した表情を浮かべる荒廃の魔王と不安気な表情をした秘密公爵…なんというかいつもとは逆の表情だ。
「で?魔王が三人、こんなところでなにをしてるのですか?」私は正直逃げ出したい気分でいっぱいだった…が逃げるわけにはいかなかった。ファルツを守るためには情報が必要だったからだ。だが、返ってきた答えは少し後悔しそうになるほどのマシンガンだった。
「アゼルの願いを叶えるために温泉に来ただけよ?大変だったんだから、ルーのやつに頭を下げて獣の欠片を一つプレゼントしてまで、アゼルのプラーナ吸収を止めてもらって…それでもプラーナ吸収を完全には抑えられないとかぬかしやがったから、プラーナが潤沢ですぐには枯れそうにない温泉をあの生意気な、温泉魔王に聞いて…大変だったんだから!それでやっと準備ができて、ルーに頼んだアゼルの能力を封じて温泉に行く前日に、そこのバカ吸血鬼がやっかいな魔法を創りあげて、あの魔法オタクにばれて、私が滅ぼす世界が滅ぼされる?冗談じゃないわよ!今すぐそこの吸血鬼を滅ぼして魔法をなかったことにしたいけど…今のままじゃそういうわけにもいかないのよ」息を切らせながら言い切る大魔王…そしてそこまでしゃべったところで隣で死んだ目をしていた秘密公爵が立ち上がった。
「大魔王ベル…そんな自分の心情はいいですから、早く本題を…私今の状態ものすごく辛いんです」そんなことを言う、秘密公爵は本当に弱っていた。今なら殺れる…そんな思いを私に抱かせるほど…
「…いや、あんたよくその本持たずに時刻表持ってる「ベル様、本題に戻ってください」さすがにあきれたのか、ファルツが話を促す…様付けなのは気になるが、今突っ込むとまた話が進まないような気がした。あとで、問い詰めよう。
「…まぁ、いいわ。結論だけ言うと、あなたがその魔法を”秘密”にしたおかげで、リオンの本に記述されちゃったのよ。」魔王がため息をつく。だけど、その内容は最悪なものだった。
「なっ…じゃあ、私たちがしようとしてることはなにも意味がな「話は最後まで聞きなさい、時泉このは」私の叫びはベール・ゼファーに遮られた。
「そんな情報、こっちとしても迷惑だったから、とっさにリオンの本ごと”秘密”を封印したわ。感謝しなさい。」勝ち誇ったように笑う大魔王。
「あ、ありがとう?」その勢いに押されお礼を述べ…そして気づく…意味が分からない。なぜアドバンテージとなる力をみすみす見逃すのか?
だから、素直に聞いてみた
※※※
「って、なぜアドバンテージになりうる要素を捨てるのですか?」そのこのはの疑問にあたしは笑って答える。
「絶対に成功するなんてつまらないでしょ。ゲームだって結果が分からないからおもしろいのよ。それに…」(そんな危険な情報をリオンに持たせておくわけにはいかないじゃない。どれだけの魔王と冥魔とウィザードが狙ってくると思ってるのよ。べ、べつに私が負けるとは思ってないけど…少しでも危険は避けなきゃね)あたしは心の中でつぶやく。
「ふふ、ベルは優しいね。」そんな私をアゼルが笑って見ていた。
※※※
「それで、よ。この状況を打破するのに確実な方法、それはあんた等がしようとしてる記憶結晶による記憶の完全抹消しかない状況なのよ、つまんないことにね」そういってホントにつまらなそうに笑った。
「つまり、今回に限ってはあなた達が助けてくれると、そういうことでいいのですか?」私は力を抜きながらそうたずねた。
「そういうことね。ただ、まぁ条件があるけどね」
「条件?」そう言うベール・ゼファーの瞳を見て、私は一瞬でも力を抜いた自分を叱咤していた。なぜなら、その時のベール・ゼファーは
「そうよ…これくらいは簡単に切り抜けられるレベルじゃなきゃ…あたしの駒になる資格はないのよ」今まで浮かべてきた表情の中でもっとも美しく…冷酷な笑みをしていたから。