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「それで、結局のところどうしてファルツは狙われてるんですか」そんなこんなで気絶してしまった、ファルツに“キュア”をかけるくれは様に私は状況を聞く。とりあえず、さっきまでバクバク言っていた動悸も治まり、いつもの調子を取り戻せたようだ。いろんなものを越えたのかな。
「いや、昔みたいにお兄ちゃんで…い、いや何でもない」なにか面白いこと言ってる途中でファルツが言葉を止める。そしてなぜか汗だくになるファルツ…おかしいなぁ、私は笑っただけなのに…ふっふっふ。
「は、はわ…えっとね。ファルツさんの家って魔法や魔導具を作成する事にたけた一族さんでね…」それは知らなかった。
「ええ、私もまぁその一族の名に恥じないように、色々と魔法を作ってきたのですが、今回少し…いえ、正直に言います。非常にやっかいな魔法が出来上がってしまったのです」ため息を吐きながらファルツは言った。
「危険って、町…うーんちっちゃいか…じゃあ国!そう国を一つ滅ぼしちゃうような攻撃魔法とかですか?」横に座る古鉄が目をキラキラ輝かせながら尋ねる。
だけど、私は違うと思った。その程度…「その程度ならそんなに焦ってませんよ、といいますかその程度の魔法ならどこの組織も持ってますから…話を戻します。私が今回開発したのは補助魔法です」
「「「補助魔法?」」」私、古鉄、くれは様の声がハモる。さすがに補助魔法とくるとは思っていなかった。
「ええ、一握りの成功※1(サクセス・イン)という、次に行う事を巧くできる、ちょとした魔法…の予定だったのですが…」ファルツはそこまで言うと、少し遠くを見るように、私たちから目を逸らす。
「なにが出来上がったの?」ファルツの雰囲気を感じ、私は自然と硬い声になっていた。
「・・・奇跡の暴走※2(エクセシブ・ミラクル)…次に行う事が確実に成功する、最高の魔法です。」その笑いは自虐的な笑いだった。
「なにがそんなに危険なんですか?」古鉄がもっのすっごい不思議そうな声を上げる。
だけど、私とくれは様はその魔法の危険性に気づいた。
「はわぁ…危険だねぇ」
「つまり、奇跡のような確立で起こるべき事が確実に起きてしまう…と、厄介すぎます。」私達は揃ってため息をつく。
「あるじ様、あるじ様…古鉄にはどの辺が危険なのかわからないのですが、“成功”するって、攻撃や魔法が当たる程度なのでは?」その様子を不思議そうに古鉄が言ってきた。そう、普通に考えればその程度だ。ファルツが創る予定だった魔法とそこまで変わらない・・・だが
「あ…うーん。どういえばいいのかなぁ。あのね、古鉄ちゃんさっきの話で国を破壊できる魔法があるって言ったでしょ?」
「はい、どこの組織でも持ってるって言ってました。でも私見たことありません。」見てたら怖いなぁ。
「うん、みんな持ってるけど使わないの…それは、人がそこまでバカじゃないから、って言いたいんだけどね。」そう、人はどこまで行っても愚かで足りない存在だ。現状より上に、人より上に立つことを求め、誰かの下に付くことを忌避する。それでありながら“個”としては存在できない、ひどく歪で不完全な存在…それが“人”だ。だから…
「使わないのは、純粋にその魔法を発動することがとても難しいから…ただそれだけの理由。」私の声は自分で思っていた以上に冷たかった。
「うんまぁ、そういう理由で使われてないんだけど、ファルツさんが今回作った魔法があれば使えるってことだね。」
「そう、そして発動すれば“世界が滅ぶ魔法”を持つ魔王がいます。だから、この魔法は絶対になかったことにしなければなりません。」そうファルツが言葉を続けた。
「はわっ、そんな魔王いるの!?」くれは様の驚く内容を私は静かに聞いていた…それよりも気になる情報があったからだ。
「3つ聞きたいことがあります。一つ、”世界が滅ぶ魔法”を持つ魔王の詳しい詳細。2つ、なかったことにすると言いましたがどんな方法か。そして…」正直この二つはどうでも良かった。ほんとに訊きたいのは最後の一つ。だけど…
「3つ、その方法が上手く行かなかった場合…あなたはどうするつもりですか?」その答えも私は解るような気がしていた。
「一つ目、名前はラグナ=ラウグ。世界結界が生まれて以来、世界を破滅させる魔王を唱え、失敗し続けているという魔王です。それ以外は知りません。二つ目、境界世界の一つ“忘却の森”に存在する…と言われる“記憶の結晶(メモリーコンフリクト)”。このアイテムで記憶を吸収、固形化すれば記憶を完全に消せるはずです。3つ目は…」少し言うのを迷う、そんな間とファルツの悲しみを含んだ笑みで私は彼の覚悟が何となく解った。
※※※
「プラーナを消失させることで、私の存在自体を消します」まるで当たり前のことのようにファルツさんは言った。
「はわっ、なにを…」「赤羽くれは守護者代行、本来なら3つ目が最善の方法です。しかし、私とてまだ消えたくない。それゆえに少し足掻かせていただきます。ですが、それが叶わないのならば…」あたしはなにも言えなかった。彼の笑みの中に私にはできない覚悟を感じ取れたから。
こんな決断を”真昼の月”アンゼロットは繰り返し続けていたのだろうか?
私はあの時、こんな覚悟ができていただろうか?
私は、守護者代行になって初めて辛いと思った。自分の命令で世界が滅び、人が命を賭ける、そんな立場でいることが。
ふいに…あいつに会いたい、そう思った。なににも惑わされない、自分が信じる道を走る幼なじみに。
「まぁ、自分が作り上げてしまった世界の危機に責任を持つのは当然のことですよ。だからくれはさん、あなたが責任を持つ必要はありま…ぶっ」そう言って彼は笑みを浮かべ…吹っ飛んだ。
※※※
「はわー!?」くれは様の驚愕の叫びをBGMにファルツは吹っ飛んだ…私の黄金の右手によって。
「ななな、なにをしてるのこのはちゃんー」「わー、あるじ様が切れたー」驚愕と笑いを受けている私は…なぜか苛ついていた。
「こ、このはちゃん。なにを…」
「うるさいカッコつけ。消えたくないなら最後まで突き通せ。まるで納得して消えるみたいなことぬかすな。」自分で言った言葉を自分で聞き気づく、私は彼の言葉にむかついていたようだ。世界を滅ぼさないためなら命を賭ける・命を刈り取ることも厭わなかったはずの私が、彼が命を捨てようとすることに怒っている。そんな自分に驚いていた。
「い、いや、でもね…」
「だまれ…つーかなに?駄目だろうなぁとか最初から思ってるなら、さっさと消えろ。というか私が消してやる!消されたくなければ諦めるな!諦めないでよ!」私は息を荒くして何を言ってるのだろう?まるで、彼を失いたくないみたいじゃないか。
そんな私を目を丸くした二人と古鉄が見ていた。
「それに…「恋する乙女の主張の最中すみませんが、あるじ様…囲まれてます」私の叫びをいつもとは違う古鉄の声が遮った。…私はなにを言ってたんだろうか?というか古鉄が核心を…
「違う、今考えるべきことは違う。古鉄、どういうこと?」ゆだった頭を、無理矢理正常に戻す。
「まさか…ここはアンゼロット城だよ?囲まれてるってなにに…」くれは様も不思議そうにしている。
だが…。
「一部ロンギヌスと絶滅社、また御門・真行寺家の混成部隊と言ったところですよ、赤羽くれは世界の守護者代行見習い」部屋の扉が開け放たれると同時に周囲の壁が一斉に崩壊した。
※※※
「はわっ、ど、どういうこと!?」執務室の壁がいっせいに崩れるとそこは蒼い月匣に包まれていた。蒼い月匣、それはウィザードが張っているものだ。そしてそれを示すように、多くの人があたし達をとり囲んでいた。そして、中心に立っていた黒ずくめの怪しい男が前に進み出て叫んだ。
「くれは代行見習い…私たちはお前がその立場にいることを認めていない。元は魔王の駒である“星の巫女”、今も魔王と馴れ合い、仕事は遅い…そしてアンゼロットのような世界を守るためならばすべてを贄に捧げる覚悟もない。そんな者が上に立っていては…世界は滅びる!」今まさに私が考えてしまっていたことを。
そして、その周りのウィザード達も追従し、あたしを罵る。
「あ…う…」あたしは心底驚いていたものの…くやしいが納得していた。
あたしはアンゼロットさんが第三世界エルネイシア旅立つ直前言っていたことを思い出す。
『あなたなら世界の守護者代行を勤めることができる、そう私は考えていますが、それを認めない人も数多くいることでしょう…まぁ、すぐに帰ってきますから大丈夫だと思いますが。』そう、アンゼロットさんも言っていた。
そんな時からもうすぐ一年。限界がきていたのかもしれない、そう思った。
そして…あたしは誰かを犠牲にする覚悟もないことも自分で理解していた。だから、だからずっと怖かった。あたしの決定が誰かを犠牲にすることが。今回だってそうだ。だから…あたしは彼の言葉を否定することができなかった。だけど…
「それは違う…」否定の言葉が響いた。
それは、大きな声でも感情の見える声でもない、だけど心に響く…親友の声だった。
※※※
突然の乱入、そしてバカみたいな妄言。正直、私は突発的に銃弾をばらまくところだった。
確かに、彼らの言っていることはある面では正しい、世界のために命を贄とする・・・今回ならばファルツを殺すと言うことは世界を救う簡単な方法、アンゼロット様ならばきっと、その判断を下しただろう…だが、こいつらはアンゼロット様の嘆きを知っているのだろうか、くれは様の苦しみを知っているのだろうか?
アンゼロット様はいつも苦しんでいた、自らが持つ巨大な力を使えないこと、ウィザードを死地に送ること、世界の危機を防ぐために…罪もない者達を殺すことを。そして、そのすべての罪を彼女は背負っていた。
くれは様も自分が罪を背負おうとする方だ…だからこそ誰も犠牲にならない道を模索する。それは諸刃の行動だ、だけど、それでこそ“人”の守護者なのだと思う。アンゼロット様のような“神”とは違う…まぁアンゼロット様も“神”にはなりきれていなかったけど。
たぶん、アンゼロット様が彼女を自分の後継とした最大の理由はそこなのだと思う…そして私たちロンギヌスの多くが彼女たちに付き従うその理由も。だから、迷うくれは様を見て私は平静を取り戻した。
彼女の答え次第で私の立ち位置は変わる、そう覚悟し思う…私はどちらの答えを求めているのだろうか。アンゼロット様のような存在になってくれること?それとも・・・。だけど・・・
「それは違う…」閉ざされた世界の外側から声が響いた。
「この声は…」行動を決めかねていた私はこの声を聞き、私は吸っていた息を吐き出した。そして彼女たちが来るならば、私たちの出番はここじゃない、そんな風に私は感じたからだ。
「ばかなっ、ここは月匣を4重に展開している場所だぞ…」バカの頭が震えた声で吠えている。彼に結界の類が通じるわけないじゃないか。そして・・・
「ヒルコォー」その叫びとともに、闇の刃が世界の隔たりを斬り開き・・・
「ガンナーズブルームっ」その声とともに放たれた弾丸が密集していたウィザードを吹き飛ばした。
※※※
今日はここまで、ここからはオリジナルな魔法の設定 データ的には
※1一握りの成功(サクセス・イン)
魔法レベル・5 タイミング・マイナー 判定値 〔幸運〕 難易度 20 代償・MP18、6カウント
効果 メジャーアクションの際行われる最初の判定をC値として扱う。
※2奇跡の暴走(エクセシブ・ミラクル)
魔法レベル・8 タイミング・オート 判定値 自動成功 難易度 なし 代償 3プラーナ
効果 次に行われる行動が〔絶対成功〕になる。
と考えています。正直、奇跡の暴走が強すぎるとか、一握りの成功を創っててなんでそんなもんができるんだとか言われそうですが、そこはシナリオの都合ということで許してください。